ミーハーのくせに女性タレントに全く興味がないので
なっちさんのことは全然知らない。
じゃあ何も言うなよって言われるかも知れないけれど
軽々しく書くわけじゃなくて、ただ、詩歌を読む者のはしくれとして、
彼女が「詩」を「盗作した」と言われることに
ものすごく違和感を感じる。
詩歌というのは、他の文芸に比べて、はるかに「所有感」の高いものだ。
一節の言葉に胸ふるわせたことのある人ならばわかる
あの、「これはわたしの詩だ」と掻き抱きたくなる感覚。
自分の言葉と、他人の言葉の境界線が見えなくなる。
それが、詩歌を読みくちずさむ魅力の全てと言っても良いとさえ思う。
辻征夫さん*1は子どもの頃学校の先生が作った詩を
好きになりすぎてお母さんにあなたが作ったのかと言われて思わずうんと言ってしまったと
エッセイに書かれていたが、それは詩歌における普通のことだ。
高校生の短歌の大会で、俵万智さんの短歌そっくりの作品が入選したときも
あれは、その高校生の中で、あの短歌があまりに自分のものになりすぎて、
区別が付かなくなってしまったんだと思った。
あとから入選を取り消された高校生は、なにも恥じることはない。
恥じるべき人がいるとすれば、本歌に気付かなかった審査員と、
やはり気付かないままそれを紹介した天声人語氏だ。
彼らはそれでお金を貰っているのだから。
そう、なっちさんはお金を貰っている。本を出版することによって。
でも彼女は「これを流用して儲けてやろう」なんて思っただろうか。
盗作ってそういうことだろう?
それに、本は彼女一人で出すものではない。何人もの眼に触れてから世に出る。
失礼ながら、彼女はアイドルとしてのプロであって、文筆家ではない。
その彼女の本に対して、検閲が甘かったということはつまり、
詩歌という文芸が持つちからをみくびっている。
詩歌にも、読者にも、なっちさんに対しても失礼だ。そして編集という仕事に対しても。


彼女が今回のことで書くことに臆することがなければいいと強く思う。
言葉を愛しこれは自分のものだと恍惚とする幸福感を怖がったりしないで欲しいと。
仲間が40人がかりで謝るのではなく、
いっそ紅白に出て「来年は心機一転がんばります」って言えば良いと思う。
言葉を愛する人の真摯な言葉は誤解なく伝わる。きっと。

*1:辻の字ほんとうは二点しんにょう