おどりば金魚

おどりば金魚


この方の作品は初めて買ったのだけどもうおおあたり。とても素敵な本でした。一棟のアパートの住人が入れ替わり立ち替わり現れて関わり合うのだけど、緻密なのに作為っぽくないと言うか。私は小説を読むのが下手なので、伏線の波状攻撃はそれだけで疲れてしまうのだけど、そんなことなくするりと読めて嬉しい。


そもそも読んでみようと思ったのは、最初の短編の主人公「依子さん」が百科事典型人間*1で親近感を持ったからです。さっきも言ったとおり、小説を読むのが下手なので、基本的に共感しやすいものばかりを読みます。中島たい子作品とか。私はがちがちの百科事典型で、電化製品の説明書も熟読です。
学生の頃、保坂和志とかばかり読んでいたせいか、冒頭文で登場人物がフルネームルビ付きでさりげなく*2紹介されるとそれだけで萎えて読み進められなくなっちゃうんで、この小説は登場人物をみんなさんづけで呼んでいるところにも惹かれました。


どの話も書き出しと結びがすーごく好みなんだよなぁ。ほんとにどれもていねいで、タイトルからもわかるとおり、漢字の取捨選択にもこころをくだいていて。カバーを外した表紙も好きです。淡々と言うにはあたたかく、想い出と言うには前向きな、やわらかくも清々しい小説群でした。

*1:なにかを始めるときにまず百科事典を調べて始めるタイプの人間。例えば釣りを始めようとしたとき、竿の各部名称の暗記からはいるとか

*2:と書いてはいるが実際はちっともさりげなくない。「車から降りた藤波敬一郎は首筋に伝う汗を拭った」とか